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2026年


メールマガジン No.2

2026年7月30日配信


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 CUDBASを体験したい場合、VEDACに限らず、JEED(高齢・障害・求職者雇用支援機構)の職業訓練施設でもその手法が学べます。今回は、JEEDの村上智広様に、CUDBASとの出会い、ご自身の実践経緯、そしてJEEDでのCUDBAS指導経験や今後のCUDBAS展望などお尋ねしました。

質問:職業能力開発総合大学校(以下、職業大)にて、長年CUDBASを利用されていると聞いております。まずは、JEEDという組織と職業大との関わりを教えて頂けますか。
村上:JEEDはJapan Organization for Employment of the Elderly, Persons with Disabilities and Job Seekersの略称で、日本語名称は「高齢・障害・求職者雇用支援機構」になります。機構の役割は大きく分けて、障がい者向けの支援と、健常な求職者・在職者向けの職業能力開発支援の二つです。その中で中心的な役割の一つを担っているのが、職業大で、日本で唯一、職業訓練指導員(以下、指導員)を育成する機関です。卒業生の約半数は、ポリテクカレッジ(職業能力開発大学校)や、ポリテクセンター(職業能力開発促進センター)などに赴任し、ものづくりを中心とした職業訓練の指導員として活躍しています。私はこれまで職業大でCUDBASを用いた授業や研修を長年実施していました。この4月からは関東職業能力開発大学校の校長として現場のリーダーになれる実践技術者の育成を行っています。

質問:CUDBASの起源を、村上さんはどのように理解されているのでしょうか。
村上: 私がCUDBASを知ったのは今から30年ほど前で、フィリピンのJICAプロジェクトに赴任している時でした。CUDBASの出発点は、開発途上国向けの職業訓練支援にあると理解しています。当時、日本から海外へ職業訓練指導員が派遣され、新しい訓練施設や訓練科を立ち上げる支援が行われていました。しかし、日本の職業訓練カリキュラムをそのまま移植しても上手くゆきませんでした。国や地域によって必要とされる職種・技能・産業ニーズが異なるためです。そこで1980年代後半、当時職業大で指導されていた森和夫先生を中心に、現地の仕事を分析し、必要な能力を明らかにして訓練カリキュラムを作る手法の開発が始まりました。その成果がCUDBASの開発です。その経緯は職業大が発行している文献 に記されています。

質問:海外への職業訓練指導用に使われたとの事、当時の日本ではすでにカリキュラムが整備されていたと思います。国内でも同様のニーズはあったのでしょうか。
村上:はい、ありました。その一例として、当時の労働省(現在の厚生労働省)の依頼により開発されたPROTSという指導員育成の包括的な仕組みがあります。PROTSの訓練実践にかかわる内容としては、次の9ステップがあります。1) :技術・技能教育と指導員の役割、2)訓練ニーズの把握とコース設定、3)訓練プログラムの編成の方法、4)学習指導の基本、5)講義の進め方、6)実習の進め方の基礎、7)感覚運動系技能実習の進め方、8)知的管理系技術実習の進め方、9)訓練評価の進め方です。CUDBASは、この中の「3)訓練プログラムの編成の方法」に該当する手法です。2000年ごろにCUDBASはPROTSと離れて単独で活用されるようになります。単独の技法として洗練され、企業内の暗黙知の継承技法や体系的な人材育成を目的とし、多くの日本企業で活用されるようになりました。

<注>
森和夫,CUDBASの発展とその展望,職業能力開発研究,第16巻,1998,p110-p125.

質問: ODAの職業訓練支援は一時に比べて減少してきています。村上様も海外での職業訓練支援をされてきたと聞いていますが、海外でCUDBASは利用されたのでしょうか。
村上:私はフィリピンに職業訓練の専門家(板金科)として派遣されていた際にCUDBASの存在を知りました。しかし実践には至りませんでした。滞在中に同僚の専門家だった久米氏(現在:VEDAC代表理事)からCUDBASを学ぶことを勧められており、帰国後に職業大でCUDBAS研修を受講しました。CUDBASを学ぶことで職業訓練を設計するためには、まず仕事に必要な能力を分析する必要があるという理解に至りました。この考え方は、在職者訓練を行う指導員も含め、すべての指導員が持っておくべき基本だと感じました。これが、その後CUDBASに長年関わるきっかけともなりました。


JICA課題別研修「CUDBASによる訓練プログラム開発」の指導風景

■インタビュアー後記:
 海外で技術指導にあたる指導者のため、指導技術訓練システムの一部として誕生したCUDBASが、時代の変遷とともに国内の中小企業支援へと形を変え、今なお活用されており、CUDBASの普遍的な有用性を物語っています。「職業能力を分析することこそが訓練設計の起点である」という点は、教育訓練に携わるすべての実務家が立ち返るべき原点であると感じました。

(職業教育開発協会 理事)




 前回の議論では藤田さんの提起で「AI肯定論/慎重論から見えてきたもの」について議論して、人間同士の対話によって、その職業の価値を掘り起こしていくことの重要性を確認しました。第2回のテーマは、人間同士の対話をもう少し深めて、提起したいと思います。

(提起者:久米)
 今回、私はCUDBASが如何にオーナーシップを引き出す人材育成ツールであるかについて述べていきたいと思います。私は、これまでにJICAの海外技術協力プロジェクトを介して8カ国で12案件に参画してきました。これらは開発途上国の発展を支えるための技術協力です。支援分野は、農業技術、教育、人材育成、工業技術、医療・看護など多岐にわたります。
 各国のプロジェクトにおいて、各国の指導者層を対象に指導してきました。そして、これらのプロジェクトに共通して導入してきたのが、CUDBAS手法です。中でも、コンゴ民主共和国で実施された警察研修実施強化プロジェクトは、CUDBASによるカリキュラム開発支援の中でも特に大きな達成感を得た経験でした。
 このプロジェクトで開発したのは【交通警察官訓練コース】です。以前のJICAによる警察分野の協力は、主に国連警察などを通じた研修運営支援が中心でした。これまでの研修では、国連警察などが世界的に共通する交通ルールや規定を基にカリキュラムを作成していました。しかし、それらはコンゴ民主共和国の交通事情や警察官の技能・マナーといった現場の状況を十分に反映したものではなく、現地のニーズに応じた指導項目の優先度も十分に検討されていませんでした。例えば、国際基準の指導項目の全面的な導入により、彼らには難易度の高いものでした。そこで今回のプロジェクトではCUDBASを導入したのです。
 コース開発には、現場をよく知るベテランの交通警察官他5名が参加しました。すでに育成中の10名の現地指導者がファシリテーターを務め、作業を進めました。自らカリキュラムを開発した点が今回の最大の特徴です。従って、カリキュラムに書き出されたすべての能力項目について、彼ら自身が実際に指導することも可能になったのです。
 プロジェクト関係者の中には、「以前の研修と比べて指導する能力水準が低すぎるのではないか」という声もありましたが、私は「CUDBASを用いることで、彼ら自身が自分自身のあるべき姿を描き出すことで納得できるカリキュラムを組み立てられる」ことを主張しました。そのような場面に参加したことを誇りに思い、使われ続けることの良さを感じたのではないかと思いました。そして何よりの成果は、研修コースに対する強いオーナーシップが生まれたことでした。その後も、コンゴ民主共和国では、同様の成果を生み出していると聞いています。

(討議者:西村)
 CUDBASは現場から出発します。だから、今の状況に適合したリアリティと現場の人たちのリアルな能力構造に基づくCUDBASの面目躍如ですね。そのことが、オーナーシップとオリジナリティに確かにつながるのでしょう。CUDBASによる参画と協働の実践力、効果を感じます。

(討議者:藤田)
 多くの国際機関の支援によるガイドライン開発や研修は導入しやすく、成果としてアピールしやすいことがあります。領域を問わず多くのプロジェクトで行われているのも事実です。これに対して、今回の久米さんの取り組みは、草の根レベルのニーズや重要度をもとに作成されていることに大きな意義を感じました。オーナーシップにより士気を高められる点も、CUDBASの魅力と言えそうです。

(提起者:久米)
 この「CUDBAS的とは?」の協議の際、私のイメージは現場の問題解決ツールとしてのCUDBASでした。実際にオリジナリティとオーナーシップの高いカリキュラム開発を終えました。お二人とのメールによるキャッチボールで、私のCUDBAS観が纏まりました。CUDBASの価値の認識共有が深まった喜びもあります。ありがとうございました。


交通警察官研修コース
カリキュラム作成作業

(職業教育開発協会 代表理事)




はじめに
 私は職業訓練のプロジェクトに関わる一方で、教育コンサルタントおよびキャリアコンサルタントとして業務に携わる中で、CUDBASの実践事例に間接的に触れてきました。本稿では、工場、病院、大学の事例から得た気付きを述べます。ここに示す工場(トッパン株式会社滝野工場)と大学(神奈川大学)では、いわゆる標準的なCUDBAS手法ではなく、応用的な活用がなされています。また、それぞれの現場の目的や背景は大きく異なります。しかし同時に、そこには共通点も見出すことができます。この事象は、CUDBASという思考法が持つ「多様性」と「普遍性」の両面を象徴しているように感じられます。

現場によって異なる「相違点」
 まず、「相違点」に注目してみます。とりわけ興味深かったのは、工場と病院における「態度」の扱い方の違いです。工場では「クレームゼロ」という明確な成果を達成するため、「態度がとれる」といった評価の難しい曖昧な表現は能力カードに記載しない。一方、病院では「相手に応じた適切な態度をとる」といった能力がむしろ重視されています。看護の現場では、知識・技能・態度が一体であるため、「相手に応じた態度」も評価可能な能力として扱われています。このように、職種や領域によって求められる能力の定義が大きく異なるという事実を、同一のフレームワークの中で明確に捉えられる点は、CUDBASの大きな特徴であり、非常に示唆に富むものだと感じます。

 また、大学での実践も、工場や病院とは異なる方向性を持っています。工場や病院が、「理想の状態とのギャップから課題を抽出し、解決策を導く」というバックキャスティング型の取り組みであるのに対し、大学では、「将来身につけたい能力を考える」フォアキャスティングの手法として活用されています。学生は理想像を自ら定義し、他者との対話や実践を通じて自己理解を深めていきます。その過程では、内省の機会が自然に生まれ、主体的な成長へとつながっていきます。このように、「現状起点の課題解決」と「未来起点の目標形成」という、相反するアプローチが存在する柔軟性は特徴と考えます。


イメージ図

現場が違っても変わらない「共通点」
 一方で、これらの事例には「共通点」も存在します。第一に、参加者が自らの業務や将来像を客観的に捉え直す機会となっている点です。研修の中で、自らの仕事に新鮮な気づきを得る参加者の様子や、表情や認識が変化していくプロセスは、各事例から生き生きと伝わってきます。私自身も、同席した現場でその様子を目の当たりにしました。

 第二に、CUDBASチャート作成後に見られる自発的な行動変容です。すなわち、「人が主体的に動き始める」という点です。例えば工場では、従業員が自らの業務マニュアルや資料をより良くしようと工夫を重ね、その過程で仕事の面白さを再発見しています。また大学では、学生が徹底した自己分析を通じて苦手な課題に挑戦し、最終的には自信を持って進路選択に臨むといった変化が見られます。

 これらは、試験の点数や画一的な評価指標には現れない、「内面的な成長」や「自律的行動」の表れだと言えるでしょう。CUDBASは、こうした目に見えにくい変化や可能性を引き出す契機となっているのではないかと感じています。
 完成したチャートそのものだけでなく、それを作り上げるプロセスにも意味があります。理想的な状態を定義し、そこに至る道筋を自ら考え、他者と議論するプロセスこそが、深い学びを生む本質的な価値なのではないでしょうか。なお、病院での継続効果は未確認ですが、同様に、主体的な変化が生まれていることを期待しています。

おわりに
 これら三つの事例は、適用方法こそ異なるものの、最終的には人の内面に働きかけ、自律的な成長を促す手法であるという点で共通しています。教育やキャリア支援に携わる立場として、「いかに自律を引き出すか」を重要視する私にとって、CUDBASは、自立を引き出す有効なアプローチであると強く感じました。 今後、自分自身がCUDBASを実践する機会を得た際には、人の内省や自律的な行動がどのように引き出されるのかに注目していきたいと思います。

(職業教育開発協会 理事)




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