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技能分析手法SAT( Skill Analysis for Traing )の原理





技能分析手法の開発のバックグラウンド

 技能が分析できて、明快に説明できたらどれほど良いだろうと考えることは少なくない。技能分析手法はそれほど魅力的なテーマである。技能分析の方法にはいくつかの方法があるが、それぞれ普及しているとは言いがたい。技能分析手法が難解であったり、具体的な手法として確立できないまま論を展開するなど、不明瞭な中に未だにあることである。
 この中でも比較的、普及してきた唯一の方法は「作業分解」であろう。これは多くの研究者らによって取り上げられてきた。手順、急所、急所の理由という枠組みで言語化を進めている。それなりに評価され、使用されてきている。もっとも評価すべき点は手法が明瞭に「作業化」していることだ。だれでも、そのマニュアルによって一定の水準の結果を得ることができることは他にはない。この方法の限界は、サイクルタイムの短い技能には有効で、また、判断や思考のプロセスまで立ち入らないことを前提に役立つと言える。
 ここで紹介する技能分析手法SATはこれらを克服するために開発されたものである。この方法は技能習熟研究に基づいて構築された。
 技術・技能伝承マニュアルはベテランの行動を整理しなければ作ることはできない。この整理に、技能分析表が役立つ。類似のものに「作業分解票」「作業手順書」などがあるが、これらは技能分析表の部分に過ぎない。訓練用技能分析手法SAT(Skill Analysis Method for Training)を紹介しよう。この手法は6つの内容で構成する。
 第1は作業の全体をつかませることである。最終的にどのようになればよいかを示すことは学習者にとつて目標設定ができ、計画的に学習を行うことが出来る。作業の目的や進め方の全貌、期待される成果などを明確に示すのである。作業の意味、意義、目的、標準作業時間などのアウトラインを明確に示すとよい。
 第2は作業環境をつかんでもらうことだ。これによって、作業条件が変わっても対応できるようになる。道具や工具、材料、設備・環境、作業者に求められる能力要件も記載する。また、この分析表を読むにはどの程度の能力を予め持っていなければならないかを書いておく。
 第3は工程別分析を進めるが、そのステップわけの大きさが重視されている。細かく分けるのではなく、比較的大きな単位の分け方をねらう。分け方が大きすぎてその作業の意味がとれないのも学習しにくい。適切な大きさを考えて分けると良い。
 第4は各ステップのポイントをわかりやすく示すことである。ベテランの行動を的確に示していく。したがって、場合によっては科学的な説明や、数量化したデータ、判断ポイント、運動の表現などを書いて行く。ここが最も工夫のいるところだ。
 第5は作業を総括的にまとめ上げることだ。ひと言でいえば何か、本質は何か、ポイントは何かをまとめて書く。
 第6は学習者が自らの作業を評価出来るように判断基準や評価ポイントを示すのだ。

SATは技能習熟研究から得られたことを反映させたもの

 図は熟練者の到達する内容を整理したものである。熟練者は「作業概念」と呼ぶ考え方を究極的に持つに至る。自動車運転にせよ、半田付け技能にせよ、その技能の種類、分野を問わず、ある水準に至るとこのような概念が生まれてくる。
 「場の概念」は作業場所、空間の概念のことである。熟練者は良好な環境作りができる。「到達目標概念」は最終仕上がり像のイメージである。製品であればその仕様、品質を表す。メンテナンスであれば良好な設備の稼働状態のイメージと言える。サービス労働ではサービス行為の品質をさしている。「空間上の運動概念」は熟練者はどう作業するか、動くかを指している。これには感覚や動作などが伴うし、診断や判断が伴う。「手段と時間の概念」は段取りや準備、予防的処置など作業の推進に伴う根本的な内容を含んでいる。



SAT技能分析表と4つの概念の関係

 技能分析表の各項目とこれらの4つの概念との対応関係を図で示してみよう。下の図のように対応していることが容易に判断できる。




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